2006.1/11:晴れ
「ほろびゆくもの。」

 「滅びゆくものに、限りない哀愁を感じてしまうんだ。」

                         ルゥ・シェヴィル


 手元にある資料では 別のセリフになっているのですが、私の記憶にある雑誌掲載時のセリフは「上手すぎる」と共にこうなっています。そして、たまに彼女のこのセリフが私の頭に蘇ります。

 ニコンが、フィルムカメラ一眼レフの大規模縮小を発表しました。事実上の撤退です。継続して販売されるのは、F6 と FM10 の二機種。FM10 は海外需要対応の、低機能低価格機種で、実際には国内での需要はありません。実質的には F6 一機種のみです。

 「写真文化」と言う単語は、お高くとまっている感があって好きではないのですが、今回は使わせてもらいます。そう、外部からは一見理解し難い、ルールと伝統と、それにより連綿と築き上げられてきた物、すなわち「文化」。それが、おそらく終焉を迎えようとしています。

 え?「たかがニコン一社がどうこうして写真文化が滅ぶか?キャノンがカメラ業界の勢力ではすでにNO1だ!」ですか?確かに、そうです。ですが、そのキャノンには「文化の担い手」とての気概がありません。

 キャノンは、優秀な企業です。そして、優秀な企業というのは、優れた商品を販売して、収益を上げねばなりません。それに血道を上げる存在に「文化」などというものを省みるという綻びは許され

ません。「ナンバーワンよりオンリーワン」では、キャノンに負けます。「オンリーワンよりナンバーワン」を目指したからこそ、今日のキャノンがあるのですし、次は「ナンバーワンかつオンリーワン」を目指すのでしょう。

 まあ、キャノンがナンバーワンでもオンリーワンでも別に「写真文化」の衰退に関係はありません(笑)。上のは、唯の愚痴。むしろ、その経営体力を使って末永くフィルムカメラを出しつづけて欲しいです。そう、それが出来るのは、これから先キャノンのみですから。これから写真をはじめる者に、写真文化の種を与え、「写真文化の担い手はキャノン唯一社!」と評されるようになっても、それはそれで嬉しい事です。信じてもらえませんかも知れませんが、別にキャノンが嫌いなわけではありませんから(笑)。ただ、ニコン撤退に気を良くして、早々にフィルム一眼レフの縮小を発表したなら、その時は「写真文化の破壊者」の称号を謹んでプレゼントさせていただきます(笑)。

 え?「別に文化を破壊はしてないじゃないか?」ですか?

 ・・・お家プリントととか、写真用紙って言うのはヤメレ(怒)。

 上の一言でわからない人は「他の文化に理解が無い」という事で諦めてください。そういうものなのです。

 滅び行く物、者、モノ、もの。最後まで見届けたいと願った彼女の気持ちが、いつもにも増して思い出されます・・・。



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